「アメトーク」はすごい番組で

とにかく自分には文章を書くくらいしかできることがなく、フリーランスで物書きの仕事をしていた二十代の頃、ひとつ仕事を終えるたびに、文字通りのフリーに戻り、ひたすら次の仕事を待つという不安定な日々を過ごしていました。
いまで言うリストラ状態を、何度も何度も味わっていたようなもので、今、ニュース番組などで、不況から職探しという話題を目にするたび、いまだに人事とは思えません。
そんな当時の僕が、心の拠り所として、読むたびに勇気をもらっていた短い言葉が、↓これです。

 世の中は、完璧にできているから、
 あなたができることには、必ず○○がある。

さて、この○○が何かは最後にお伝えするとして、ここで唐突に話題が変わって、僕が大好きなテレビ番組「雨トーク」のことを語らせてもらおうと思います。
ご存知ない方のために解説しておくと、「アメトーク」はテレビ朝日系列の深夜番組で、司会は雨あがり決死隊。プロレス好きや、農業高校出身などといった何らかの共通点があるお笑いタレントたちを「○○芸人」と称して番組は進行します。
その共通点=くくりとは、太鼓持ち(先輩を立てる)、腰痛持ち、お腹ゆるい、中学生のころイケてなかった、などなど、いままでテレビ番組が見向きもしなかったマイナーな視点ばかり。
いくら深夜とはいえ、こんな切り口のトークを60分もやっていいのか、という無謀な挑戦を続けてきた、稀有なテレビ番組なのです。
それが、なぜこんなに面白いのか、と考えると、出演者が自分の好きなことや自分自身のことを、テレビなのにテレビという制約を飛び越えて、思う存分語れるからなのでしょう。
「アメトーク」に登場するタレントさんたちは、独特の一体感の中で、水を得た魚のようにスイスイとトークを展開し、やがて興奮がMAXに到達して暴走…、会場を笑いで包み込んでいきます。
そもそものとっかかりは、前述のように、テレビで放送していいのか、というくらいどうでもいい切り口。でも、そこから信じられないほどの笑いを生んできたのでした。
僕は、この番組を見ているたび、不思議といつも、仕事がなかった頃に助けられた短い言葉を思い出すのです。

 世の中は、完璧にできているから、
 自分ができることには、必ず需要がある。

この、「自分ができること」とは、きっと、どんなささいなことであっても当てはまるのだと、「アメトーク」が証明してくれたような気がするのです。そして、「自分ができること」とは、「自分が好きでやっていること」と、ほとんど同じということも。