怒らない人

「あなたは、ほんとに怒らない人ですね」
 とよく言われるようになった。

 自分でいうのもなんだが、実際にそのとおりで、妻やこども、スタッフにも、ほとんど怒りの言葉を発しないし、あえてそうしている。
 もちろん、怒りを感じないというわけでないが、それを怒りとして表さないようにしている。

 こんな体質になったきっかけは、ふたつある。

 ひとつは、インド通いで、ノープロブレムを使いすぎ、自然と不安を手放す習慣ができたこと。

 もうひとつは、大学時代、学童保育ボランティアをやっていて、大学生ボランティアの仲間と、重い障害をもった小学生たちと過ごすという体験からだと思う。

 子どもたちは、みな車イスで、手足を動かせる子は数人。ほとんど寝たきりの子も多くいた。昼ご飯に2時間かかった。午後は散歩だけで日が暮れた。子どもたちと過ごすときは、喜ぶこと、やりたいと思っていそうなことを少しでもやらせてあげたりするのが基本。

 だから、子どもたちには、まず失敗というものがない。ケンカもない。叱る、責める、行動を正すという必要も生じない。

 つまり、怒りというものが存在しない世界だったのである。
 それは、
「やらなければならないことがない」
「なにごともゆっくりやればいい」
「やりたいことはやらなくていい」
 この3本柱が、前提にあるからだ。
 いま、思えば、あのとき出会った子どもたちは、天使のようにやさしくて美しかった。身体は不自由であったが、心はどこまでも自由だったのかもしれない。

 もちろん、私たちの大人の仕事や生活では、この3本柱はまったくあてはめることができない。でも、そう願えば、少しでも近づけることは可能だ。僕は、家庭をもち、仕事をしていても、この3つを大事にしようと思った。

 うちの娘は「ほのか」といい、我が社は「ホノカ社」という日本で有数の?ゆるい名前だが、そういう意味を込めていたのだ(と、このブログを開設してから気付いた)。

 なるべくクライアントに迷惑をかけない範囲で、上の3本柱のポリシーで無理をせず仕事を進めおよそ1年ほど。不思議なことに、最近、どの部門も売り上げが増えてきている。なぜ?