宇宙の図書館みたいなところとつながるテクニック

大学では「宗教学」のゼミをとっていましたが、その学びの中で読んだいろいろな本のうち、いちばんすごい!と思ったのは、手塚治虫の『ブッダ』でした。
よくこんな切り口で、世界のこと、人間のことを描けるものだなあと‥‥。修行したわけでもなく、ずっと机に向かって、締め切りに追われるばかりの漫画家に、どうして描けるのかと思ったものでした。

そして今年、「このマンガがすごい!2012」の第1位に選ばれたのは、『ブラックジャック創作秘話』という手塚治虫の関係者を取材した実録マンガでした。
手塚治虫といえば、ベレー帽をかぶりながら生き生きとキャラクターを描く、という姿を想像しますが、実際はその真逆だったとか。
ベレー帽は取材のときにかぶるだけ、細かい絵を描くときはメガネを外し、まるで肉体労働者のように、目で原稿を喰らうように描いていたそうです。
15分だけ寝させてくれと、事務所のコピー機とデスクのわずかな間で泥のように眠りこけている‥‥、これが「神」と呼ばれた漫画家のほんとうの姿なのでした。
という具合に、マンガに打ち込む創作意欲のすさまじさが、当時の関係者の証言を元に、これでもかというほど描かれています。
手塚治虫は、まさに神がかり状態で創作していたようですが、そんなことには、おそらく本人だけが気づかぬまま、ただ、がむしゃらに描き続けた、という印象を受けました。
手塚治虫のような天才になれる人は、ごく一部だとしても、最近、よく耳にする「クラウド」にアクセスするように、宇宙の図書館みたいなところとつながるテクニックとは、ただがむしゃらに、夢中になることでいいのかもしれない、とも思うのです。
いつだって、自分の中には自分を越えたものがあると、信じていれば、ふつふつと力が湧いてくるような気がします。