君はクイズの主人公!

大学生の頃、障害をもった小中学生と夏休みなどの長期休暇を共に過ごす、学童保育のボランティアをやっていました。僕が所属していたグループは、障害の軽い子から、ほとんど寝たきりの子まで十三名、毎日、同じ数だけの学生がつき、施設の大部屋で一日を過ごします。

何をするかというと、散歩やゲーム、ボール投げなど、遊ぶことは無限にあるにはありますが、身体をつかった楽しげな遊びほど、障害が重くて車イスに乗ったままの子が参加できず、いつものパターンで、遊ぶグループと見ているグループができてしまうのが僕ら学生の悩みでした。

首を上下にふるくらいで、まったくしゃべることも歩くこともない子どもたちとも、みんなで楽しい時間を過ごせないか、せめて一年で最大のイベント、クリスマス会だけは‥‥と、毎夜、リーダーの下宿先に集まっては考え込んでいました。

そこで、たどり着いた企画は、クリスマス会のメインイベントに、「クイズ大会」をすることでした。ただのクイズではありません。事前に子どもたちのお母さん方に、「わが子にまつわるクイズ」を用意してもらっていました。

「○○子ちゃんが大好きなぬいぐるみは、誰の名前がついているでしょう?」
など、子どもたち一人一人にまつわる秘密クイズというわけです。

これが想像以上に盛り上がり、子どもたちはみな、自分の番になると、はずかしげな、ほこらしげな、なんともいえない表情を見せ、いざ解答を発表するや、普段話したこともない自分のことを、身振り手振りでしゃべってくれるのです。

うなづくことしかしなかった車イスの男の子が、いざ自分のクイズで誰も正解を当てられなかったとき、にやりと微笑みを浮かべたとき、僕ら学生たちは、横目で視線をあわせ、うなずき合いました。

その年のクリスマス会をきっかけに、次々と新しい遊びが始まりました。時代劇のかつらを調達して撮影コンテストをしたり(それも野外で)、アイドル雑誌をバラバラにちぎってタレントの写真でお面をつくったり、みんなで遊べることってこんなにあったんだ、と驚きながら毎日を過ごすようになりました。

あれから十年、僕はいま、本や広告、ホームページづくりの仕事をしています。アイデイアが出ずに息詰まったとき、僕は必ず、学生の頃、ああやって子どもたちを楽しませたい一心で考えたネタの数々を思い出すのです。