胸元の名札を見ると、「研修生」の3文字

 二四時間営業のうどんチェーン店は、学生の頃からお世話になっています。近所にも一店舗があり、先日も夜中に入ると、見なれぬ店員さんがいました。五十歳すぎの男性で、よく声を出して働いています。遠くから見ても、店のエネルギーをあげるようなパワーがでているのがよくわかります。

 注文したうどんが運ばれてきて、ふとその方の胸元の名札を見ると、「研修生」の3文字。この3文字に、人生のドン底と再起が織り込まれているように見えました。

 やり直す、という言葉は、あまりよい印象のないのですが‥、どのような状況であっても、新しく始めることと同じなのだあと、このときうどんを食べながら考えました。

 僕の仕事では、デザインやキャッチコピーが採用されるまで、やり直し続ける、という連続です。でも、これからは、「やり始める」というマイワードで、とりかかろうと決めました。

 うどんの器を運ぶ、年輩らしいごつごつした手に、なにを込めたのでしょうか、今夜のうどんはやけにおいしい気がした、深夜3時のことでした。