「賭博黙示録カイジ」の顔のはなし

男性マンガ雑誌の話なのですが、いま僕が、「よく考えれば、これはすごいんではないか」と思っているものが、ベストセラー漫画『賭博黙示録カイジ』の、主人公の顔です。

漫画界ではもはや伝説的な作品であり、映画化もされたので、すでにご存じの方も多いかと思いますが、「知らないです」という方は是非、インターネットで検索してその顔を見てみてください。

顎はまるで出刃包丁のようにとがり、鼻筋はセラミック片のような鋭い平行四辺形です。

人間の顔からかけ離れ、さらに、漫画という枠の顔からもはるかに離れた、MAXなありえない<顔>なのですが‥‥。

不意に多額の借金を背負わされた無職の男が、闇のギャンブルで命をかけながら人生逆転の勝負をする、という極限状態の連続のストーリーであることを考えれば、生まれるべくして生まれた<顔>なのかもしれません。

ストーリーのありえなさを、ありえない顔で打ち消すことを起点として、次々と読者にかつてないリアリティを突きつけてくる作品に仕上がっているのです。

人生を一発逆転させるほどの力の底には、大きなマイナスとマイナスをかけ算して巨大なプラスにする、という方程式があるのかもしれません。

かなり小さな足し算でしか生きていない今の僕には、無縁の生き方ですが、いつか、ここぞという時には、この究極の方程式を実行してやろう‥‥、とひそかに決めました、あの顔を見て。