《脱線する》ことが‥

『奇跡の教室』(小学館)という本があります。
戦後、公立のすべり止めだった灘校で、文庫本『銀の匙』だけを3年間かけて読むという、空前絶後の授業を始めた国語教師の授業のことをまとめたノンフィクションです。
ごく最近もテレビ番組で紹介されたので、ご存じの方も多いことかと思います。
作中で主人公が凧あげをした文章があれば、授業中であろうが、生徒全員で凧あげをします。そして、ただあげるだけでなく、どうすればうまくあがるか、と、航空力学に触れていくという具合で、生徒の興味によって、どこまでも脱線をくりかえします。
この類い希な授業を受けた生徒たちは、旺盛な好奇心で学びを重ね、その多くが東大や京大に、努力らしい努力もなしに合格し、社会に出てからも、それぞれの分野で活躍していきます。
好奇心と探求心を刺激し続けてさえいけば、人生はどんどん動き出す、という証のような話です。
どうやら、《脱線する》ことが、好奇心と探求心にアクセスする、とっておきの裏技なのかもしれません。