頭の良い馬は、レースに勝てない

学生時代に陸上部の長距離選手だったせいかどうかはわからないのですが、何かをやり終えようとするとき、ラストスパートという言葉をよく使ったりします。ところが最近、文字どおりの「ラストスパート」を、マラソン中継で見ました。
ロンドン五輪のマラソン日本代表の最有力候補となった市民ランナー、川内優輝さんがいま話題になっていますが、その走りの特徴は、猛烈なラストスパートで、いつもゴールとともに意識朦朧のまま昏倒し、担架で運ばれていきます。
42キロを走り続けたその最後で全力疾走する精神力とは‥‥、尋常ではありません。
その壮絶なスパートを見ると、ラストスパートなる言葉を使っていた自分が恥ずかしくもなり、そういえば陸上部だった頃、倒れ込むほど全力で走ったことは一度でもあっただろうかとも思い起こすのでした。
現在の僕は、競争とも全力疾走とも無縁の日々を送っていますが、この前も、ニュース映像で川内選手のラストスパートを見ていて、思い出した言葉がありました。
「頭の良い馬は、レースに勝てない」
これは、競馬の話しです。頭の良い馬は自分が負けるとわかったら、本気で走らなくなるのだとか。逆に、勝つとか負けるとか余計なことを考えない馬は、全力で走りきって、思いがけず一着になるものだそうです。
実際の競馬を見たことは一度もないのですが、僕はこの言葉と出会ったおかげで、無駄だと思える仕事も手を抜くな、頭の良い馬にはなるな、と自らを律してきたように思います。
現在、やりたい仕事ができていることを振り返れば、なんだ、自分なりの全力でやってきたのだな、とちょっとだけ自分を褒めたくもなりました。