「戦場のメリークリスマス」をひさびさに観て

時代を越えて残るものは何か、を考えるのが、僕の好きなことです。

たとえば「キネマ旬報ベストテン」というお目付役的映画雑誌の、公開年でのランキング。

大島渚の「戦場のメリークリスマス」は、誰もが知っている日本映画屈指の名作ですが、公開年である1983年のキネマ旬報ベストテンでは、3位となっています。

さらに、日本映画史上ベストワンと名高い、黒澤明の「七人の侍」も、1954年の3位になっています。

つまり、どちらもその年に、上に2つもあったということです。

もちろん、このランキングがすべてではないにしても、むしろ、その年の1位の作品は埋もれていく傾向にあり、時代を越えて残る作品とは、スロースタートで評価されていくようです。

ちなみに、「戦場のメリークリスマス」にいたっては、映画関係者だけの試写会で、上映後、みな無言だったとか。

主演の坂本龍一ビートたけしは、自分たちのあまりの演技のひどさに「こっそりフィルムを燃やしちゃおうか」と話し合っていたとか(もちろん、冗談でしょうが)。

先日、僕はおよそ十年ぶりに、この「戦メリ」を観ました。

あいかわらずの意味不明な展開の中で、日本の映画でありながら、日本人をありのままの醜さで描き、立場の異なる者たちが、魂を重ね合わせていく様が見事に描かれていることに、驚きました。

時代を越えて残るもの、それはたぶん、すぐには理解できないもののであり、何か特別な使命を帯びたものであることは、まちがいないようです。