『うわさの人物 神霊と生きる人々』を読んで

超能力や霊能力は真実か、という切り口は、いまでもテレビを賑わすテーマのひとつですが、その答えのすべてを伝え切っているような本を今、読んでいます。作家の加門七海さんの『うわさの人物神霊と生きる人々』(集英社文庫)というインタビュー集で、非常に中立的な視点が貫かれています。

取材に際して350項目以上の共通の質問や、何ができて何ができないかというチェックシートを用意したりと、緻密な作家らしい切り口で、超能力者&霊能力者とは何かを突き詰めていくのです。

中には、懐疑派の代表でもあるあの大槻教授とテレビ出演し、大槻教授の使っているゴルフクラブのヘッドカバーを言い当てて黙られたというハマサイ氏も登場しています。

もちろん、この本は、超能力や霊能力が真実か真実ではないか、という視点で書かれたものではありません。僕が興味をもったのは、「私の目には悪は存在しない、悪いものは何も見えない」という霊能者の言葉でした。

おそらくは、目に見えるもの、見えないものも含め、魑魅魍魎すさまじい人や霊と接してきたであろう霊能者が語った言葉が、「悪いものは見えてない」の一言。卓越している、といえばそれまでですが、ただ人や世界を信じて生きるという姿勢が、この本を読んで最終的に、自分の中に残ったことです。

どんな能力を持っているにしろ、いないにしろ、生きるとは、ただ信じ続けることなのではないか、と哲学的なことを思うこの頃でした。